今日の書・15〜バズる≒炎上

今日というか昨日は文化の日ということで国民の休日だったわけですが、僕は近所の入浴施設が金曜日は男性サービスデー(男性だけ割安になる)というのもあって、それ目当てで行ってみたところ、どうも休日はその割引の適用はなく、むしろ休日料金で普段よりも割高になってしまうらしく、まぁそれを知らなかった僕が悪かったので、文句を言わずにそのまま入って来たのですが、ただたまたま食堂において「ハイボール各種半額」サービスをやっていたので、そこでジンジャーハイボールとキムチ冷奴を注文することで、その休日料金と平日料金の差額分程度は何とか取り戻すことに成功したのですが、いつものお決まりコースとして帰りにEdionに立ち寄って、そこに置いてあるファミリー・イナダ社製「ファミリーメディカルチェア ルピナス(Lupinus)FMC-LPN10000」に乗り、「疲労回復コース」を処方してもらうと、脳の上の方からベールに包み込まれるような感覚に陥り、リラックス感を超えてどうしようもない虚脱感というか、底知れぬ睡魔に襲われながらも家に帰り着き、夕食に鍋を食した後、そう言えば今日は欅坂46がミュージックステーションに出るのだったなと思い出してテレビを付けると折良く欅ちゃんの出番になったところで、そのまま新曲の『風に吹かれても』のパフォーマンスを拝謁し(「平手ちゃんが欅の葉を踏み付けて終わる」という演出に注目を向けさせようとしていたようですが、率直な感想を述べると、僕にはあまり「刺さる」ものではありませんでした)、その後は特に見たいものもなかったので、テレビを消してツイッターなどをポチポチ見ていると、改めてどうにも耐えられないくらいの眠気が再訪問して来たところで、ブログの準備どころか書くネタすら見つかってない、という状態ではありましたが、とりあえず横になろうと思って、次に目覚めるともう12時近くになっていて、それでも何だかこの抗いがたい眠さは取れていなかったので、もう今日はブログ無理か、などと考えながら再び眠りに落ち、その後再度目が覚めたときにはもう2時になっていて、まぁともかく頭の重さは多少取れたので、いよいよ日課に取り掛かろうと奮い立たせて、ネタを探してみると、やはり例の「72時間ホンネテレビ」というのがネットメディアのどこを開いても同時多発的に喧伝されていて、どうしても目に付いたので少しYouTubeの方で動画を眺めてみたりしたのですが(正直に言うと昨日の始まった辺りにAbemaTVの方で視聴してみていたのですが、カラオケをやっていたのを数分見て「そっ閉じ」したくらいで、その後また朝起きて「YouTuber草彅剛」の導入部、有名YouTuberと対談しているところはひと通り見て、番組の趣旨というか、関係各所の思惑のようなものは何となく把握しましたが、結局通信量が気になって1時間単位で「ながら視聴」であっても継続したいと思わせるほどのものではないな、という結論に至りました)、そこまで興味をそそられるコンテンツは見当たらなくて、ただひとつ気になったワードとして、草彅剛さんやその他出演者たちがしきりに口に出していた、「バズる」というもうすでに少しばかり時機を逸した感のある流行語(それでも今年の「新語・流行語大賞」にはノミネートされるとは思いますが(あるいは去年くらいにすでに入っていたか分かりませんが(笑)))がやはりどうしても耳に付いたので、今日はこれについて話してみたいと思います。
「バズる」とは、上掲の「若者言葉辞典」によると、「話題になっている、という意味。ツイッターで使うと、流行している言葉や事柄を指す。ネットマーケティング用語としても使われ、FacebookやTwitterなどのSNSを利用し口コミを増やし、アクセス数を上げること。」と端的に表されていますが、昨今はその包含する意味に多少のズレが生じ、ネガティブな観念が大きく付随するようになって来ているのではないかと思われます。

この「バズる」あるいは「バズ」がネット上でいつ頃から使われ出した言葉なのか定かではありませんが、遅くとも日本語レベルでは2015年には流行り言葉としてTwitterなどで使用が見られるようになっていたようですし、語源としての英語の"Buzz"がネット上の「噂」や「口コミ」の意味として使われ出したのはそれ以前からのようで、たとえば、2010年に"Google Buzz"というソーシャルサービスがGoogle社によって提供されていた(その後複数のサービスと併せてGoogle+に集約された)ことなどから、"Buzz"がもっと早い段階でキータームとなっていたことは確かですし、もっと広い世間一般での「流行語」を表す用語としての"Buzzword"という言葉がアメリカでは1940年代から用いられていたという話なので、その辺りまで遡れることになりそうですが、そういった諸々はさておき、この「バズる」という概念が日本国内のネットからテレビの世界にまで浸透して行ったのは比較的最近と考えられ、バカリズムさんMCの音楽番組「バズリズム(Buzz Rhythm)」の開始が2015年4月で、これが多分番組タイトルに使われた最初じゃないかと思うのですが、ともかくその辺りにはテレビ業界内でも注目され始めていた、という証拠でもあるでしょうし、まぁそうすると必ずしもネットが早いとは言い切れませんが、ともかくひと通りネットメディア界隈でこの「バズる」あるいは「バズった」という、日本語らしい作法で製造された造語動詞が消費し尽くされた後、既存メディア界隈で濫用されるようになり、それが芸能人レベルにようやく行き届いて、ネットにも再度戻って来たという印象が僕にはあって、その帰還の過程で、この「バズる」という語に様々な背景が付着し、「転石苔を生して」しまったような感じがしています。
その決定的な「苔」であると僕が考えているのが、この「株式会社VAZ」(上記リンク参照)で、綴り自体は"Buzz"からズラしてありますが、カタカナ表記ではいずれも「バズ」であるし、設立が2015年7月ということで、世の趨勢に乗じてこの「バズる」を意識して命名したのは確かなように思えるし、企業のキャッチフレーズらしい、「リアルな流行はVAZから始まる」というものを見てもネットマーケティング用語としての「バズ」から借りていると見てもいいのではないかと思うのですが、ともかくこの企業が最近YouTube界隈で大きな話題となっていたことは記憶に新しく、例の金髪カリスマYouTuberのヒカル氏によるVALU騒動の当事者として、このVAZ社が深く絡んでいて、一時は飽きるくらいいろんなところで「バズ」という音をYouTubeを通して聞かされていたのもあって、この元々ニュートラルな言葉としてあった(むしろ初めはおそらく「ネットでの成功例」を表し、良い意味で享受されていた)「バズる」というワードに、「VAZ」のイメージが重ねられて、とうとうネガティブな意味合いの方が濃くなって来た、という感覚が僕の中で芽生えて久しいのです。

そもそもこの「バズる」というワードがあえて持ち出されて来た背景には、多分いわゆる「ステルスマーケティング(通称:ステマ)」や「炎上マーケティング(通称:炎マ)」といった(エセ?)マーケティング用語がネット上で広まってきて、槍玉に挙げられまたは糾弾され、人々の間で「話題になる」ということが否定的な文脈で捉えられるようになり、「俄かに流行る」ことと「不自然に流行っているように見せられる」こととの明確な境目がなくなっていたところで、この前者をポジティブに取り上げる際のタームとして「バズる」というものが導入されたのではないかと思うのですが、それがテレビ業界等々で「コスられる」うちに一周回って
、また「ステマ」や「炎マ」に近いニュアンスを得るようになって、マーケティング指導者の側でも「バズる」から「バズらせる」へと意識が転換されてしまい、元々の「自然発生的な流行」という素朴かつある種牧歌的な古き良き概念としての「口コミ」というものが、いつしか絶対化されるようになって、それが金銭的な利益や売上のバロメータに置き換えられたように、この「バズ」というのもすなわち貨幣的価値の指標のようなものにすげ替えられて、すべての価値観の実態と同一視されるようになって来てはいないかと思えてならないし、そういった空気感を肌に纏って立ち上げられたVAZ社が、時を同じくして、再生数至上主義的なYouTuberたちの代表格として認知されるようになったのは、ある種の必然のようにも見えるし、この2017年代夏に「大炎上」を起こして、風前のともしびとなっているのは、言い換えると「バズる」という言葉自体の存在価値が完全に損なわれ、廃語となった、ということを逆説的に示しているのかもしれません。

僕個人の中ではこの通り、あえて濫用することはもはや羞らいを伴うような、あるいはそれを使用するときには軽蔑的な(自重的な)含みを匂わせたいという意図を潜ませておく必要があるような言葉となってしまっている「バズ(る)」を、いまだに積極的な意味合いでもって馬鹿のひとつ覚えのように口から繰り出している、草彅剛氏や、それ以外にも今回の「ホンネテレビ」とは無関係ですが、最近のインタビューや動画でそれを使っているのを見聞きした限りで、秋元康氏やつんく♂氏といったアイドル界隈のトッププロデューサー方は、あらゆる面で遅れている、という感じが否めないし、そこに違和感を覚えず、持て囃しているような信奉者の方々にも、僕は何となく侮蔑に近い感情を抱いてしまいます(いやもしかしたらそこまで加味したいわば「2周目」の地点でそれを口にしているのだとしたら、僕は閉口せざるを得ないのですが(笑))。

ともかく今回は、ここに述べたようなことを「バズる≒炎上」という擬方程式で表現してみました。
僕は結構長くツイッターをやっているのですが(貘宇とは別垢)、「バズった」経験はありません。
むしろより安全な方へと退避する術を編み出して、その結果、いくら過激なことを言っていても、ほとんど誰にも目くじらを立てられないような立ち位置に立てるようになったと思っていて、僕はやっぱりGoogleの餌にはなりたくないので、これからも「バズ」りもせず、「炎上」もしない暮らしを、少なくとも本垢の方では送りたいなと考えています。←

揮毫 貘宇

ドルヲタ系書家(仮)・永田貘宇のホームページです。 日記代わりに書作品を投稿しています。 作品製作の依頼等お待ちしております。

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